Linux 7.3公開、fchrootとfailfs、Btrfsの高速化
Linus Torvalds氏が2026年10月18日にLinux 7.3を公開しました。3,021人の開発者による18,765件のコミットで、新しいサンドボックス機能と、最大5倍速いBtrfsのfsyncを備えています。
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- non-merge commits in Linux 7.3, per LWN
- 18,765
- developers contributed to the release
- 3,021
- of them were first-time kernel contributors
- 807
- faster Btrfs fsync with no-holes in a sample test
- 5x
Linus Torvalds氏は2026年10月18日、予定どおりLinux 7.3をリリースしました。LWNはこれを「あらゆる面で」記録破りのリリースと呼んでいます。マージを除くコミットは18,765件で、3,021人の開発者によるものです。このリリースには、新しいサンドボックス機能、グループごとのCPUスケジューラー、より速いファイルシステムが加わりました。コンテナー、データベース、デスクトップのユーザーは、各ディストリビューションが新しいカーネルを提供すると、これらの変化を実感するでしょう。
Torvalds氏自身の発表は短いものでした。LWNによると、同氏は「この最後の1週間、特別なことは何も起きなかったようだ」と書きました。また、Linux 7.4のマージウィンドウが翌日に開くとも述べました。マージウィンドウとは、次のリリースに向けて新機能が取り込まれる期間です。
Linux 7.3の新機能
KernelNewbiesの変更履歴とLWNは、主な変更点として次を挙げています。よく出てくる用語が2つあります。BPFは、検証済みの小さなプログラムをカーネル内で実行できるようにする仕組みです。cgroupは、カーネルがまとめて管理するプロセスのグループで、コンテナーの基本的な構成要素です。
| 分野 | Linux 7.3での変更 |
|---|---|
| サンドボックス | 新しいシステムコールfchroot()と、すべての操作が失敗するファイルシステムfailfs |
| CPUスケジューリング | sched_extがcgroupのサブスケジューラーに対応し、それぞれが独自のBPFスケジューラーを実行 |
| プログラムの起動 | binfmt_miscが、プログラムを起動するたびにBPFでインタープリターを選べるように |
| ファイルシステム | Btrfsとext4の高速化。NTFSがWindows System Compressionで圧縮されたファイルを読めるように |
| ファイル共有 | カーネルのSMBサーバーが、オプトイン方式でApple Time Machineに対応 |
| 仮想マシン | userfaultfdで、VMが実際に使っているゲストメモリーを追跡可能に |
| グラフィックス | ローエンドGPUが、すぐにシステムRAMへ移るのではなく、重要度の低いバッファーを追い出すように |
| ユーザー空間のファイルシステム | FUSEがio_uringのバッファープールとゼロコピー転送に対応 |
KernelNewbiesによると、VRAMの変更はローエンドのグラフィックカードでのゲームを対象としています。sched_ext機能を使うと、BPFプログラムがCPUスケジューラーとして動作できます。サブスケジューラーにより、コンテナーのグループごとに別のスケジューラーを実行できるようになりました。
新しいサンドボックス機能:fchrootとfailfs
サンドボックスとは、プログラムを閉じ込めて、許可されたものにしか触れられないようにすることです。KernelNewbiesは、fchroot()とfailfsを合わせて、新しいサンドボックス技術として説明しています。fchroot()は、chroot()の新しい仲間です。chroot()は、プロセスがファイルシステムの最上位として見るディレクトリーを変更する古いシステムコールです。LWNによると、疑似ファイルシステムのfailfsはすべての操作を失敗させます。そこを指し示されたサンドボックス内のプログラムは、使えるものを何も見つけられません。
このリリースでは、カーネル自身のバックグラウンドスレッドの実行方法も厳しくなりました。カーネルスレッドは現在、空のファイルシステムであるnullfsの中に置かれます。これにより、最初のユーザー空間プロセスであるPID 1から切り離されます。
ファイルシステムとメモリーの高速化
KernelNewbiesは、開発者によるサンプルワークロードでの数値を示しています。
- ext4の小さなダイレクトI/O: 毎秒約192万回から219万回の操作に向上しました。
- BtrfsのダイレクトI/O: 理論上の最大値の約50%から約95%に向上しました。
- no-holes有効時のBtrfsのfsync: 約5倍高速になりました。データベースは、データを強制的にディスクに書き込むためにfsyncを呼び出します。
- KSMのロック: 最悪の場合のロック保持時間が、500ミリ秒超から2ミリ秒未満に短縮されました。KSMは同一のメモリーページを統合する機能で、主に仮想マシンのホストで使われます。
- メモリー回収: LRUロックの待ち時間が60%以上減りました。
ブロックデバイスには、RWF_DONTCACHEも追加されました。これは、データをキャッシュに残さないようカーネルに求めるフラグです。KernelNewbiesは、これをダイレクトI/Oの代替として紹介しています。これらはサンプルテストなので、実際の効果はワークロードによって異なります。
ハードウェア対応と終盤の修正
PhoronixのMichael Larabel氏は、最新システムでのI/Oの高速化と、AMD Zen 6に向けたさらなる準備を挙げています。このリリースでは、2026年版Steam Controllerのドライバーが追加され、古いAMDグラフィックカードのサポートも改善されました。
開発サイクルの終盤には、マルチプロセッサーシステムでまれに起きる起動時のハングが修正されました。この問題は2024年から存在していました。Samsung 990 PROと990 EVO PlusのSSD向けの回避策も追加されました。一部のファームウェアバージョンでは、これらのドライブが自身の機能を誤って報告します。Phoronixはまた、Darrick Wong氏が23年にわたるカーネル開発から退くと報じています。
このサイクルは、ほかの理由でも注目を集めました。Linux 7.3-rc4には、LLMツールの助けで見つかったエラーパスの修正が含まれていました。また、Ubuntu 26.10が10月15日に公開され、リリース候補版7.3-rc6からビルドされたカーネルを搭載しています。
次はLinux 7.4
Linux 7.4のマージウィンドウは10月19日に開きました。Torvalds氏は、マージのスケジュールが「しばらく少し変則的」になるかもしれないと注意を促しました。毎年恒例の家族旅行中だからです。Phoronixによると、7.4は12月末までにリリースされる可能性があります。
7.4に向けた変更の一部は、すでに順番待ちの状態です。たとえば、UnixWareの古いブートファイルシステムであるBFSを削除するパッチがあります。Phoronixはまた、7.4が今年の長期サポート(LTS)カーネルになる可能性がある一方、Greg Kroah-Hartman氏が代わりに7.3を選ぶかもしれないと推測しています。
開発者にとっての意味
ほとんどの開発者は、kernel.orgからではなく、ディストリビューション経由でLinux 7.3を入手することになります。uname -rを実行して現在のバージョンを確認し、今後数週間はディストリビューションのカーネル更新に注目してください。
コンテナーやサンドボックスを構築しているなら、fchroot()とfailfsは試す価値のある新しいツールです。これらは7.3以降にしか存在しません。そのため、これらを使うツールはサポートの有無を検出し、古いカーネルではフォールバックする必要があります。
Btrfsやext4でデータベースを運用しているなら、アップグレードの前に自分のワークロードで7.3をベンチマークしてください。注目の数値はサンプルテストによるものです。まず確認すべきは、fsyncを多用する処理やダイレクトI/Oの処理です。Samsung 990 PROや990 EVO Plusのドライブで不具合があったなら、7.3を試す価値があります。
混在したワークロードを動かすチームは、sched_extのサブスケジューラーを検討すべきです。あるコンテナーグループ向けのレイテンシー重視のスケジューラーと、バッチジョブ向けのスループット重視のスケジューラーが、1台のマシンを共有できるようになりました。LTSカーネルで標準化しているチームは、Kroah-Hartman氏がどのバージョンを指定するかに注目すべきです。
カーネルのセキュリティ作業は、リリースがあっても止まりません。7.3が出る2日前、ある研究者が、公開されたエクスプロイトを伴うInfinity Coreと呼ばれる6件のカーネルのバグを公表しました。
出典
- The 7.3 kernel has been released - LWN.net
- Linux 7.3 Released With Faster I/O Performance, AMD Zen 6 Preparations & More - Phoronix
- Linux 7.3 changelog - KernelNewbies
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